これからのソフトウエア開発

2016年8月1日公開 (2019年2月5日更新)
全16,344文字

欧米では、現在日本のソフトウェア開発プロジェクトの多くで使われているウォーターフォール型開発からアジャイル開発への移行が進んでいる。本節では、欧米でアジャイル開発の導入が進んでいる背景をまず説明し、さらにアジャイル開発の特徴や手法を簡単に紹介する。次に、リーン思想、待ち行列、経済性を考慮してプロダクト開発でより高いビジネス成果を得るための原則をまとめたプロダクト開発フローを簡単に紹介する。続いて、アジャイル開発における要望の表現としてよく用いられているユーザーストーリーと、ユーザーストーリーの実装前に受け入れテストを作成する受け入れテスト駆動開発を説明する。最後に、アジャイル、リーン、プロダクト開発フローを融合し、チームを超えた規模のアジャイル開発の枠組みを提案するSAFe (Scaled Agile Framework)を紹介する。

1.アジャイル開発とは

(1)アジャイル開発が生まれた背景

ウォーターフォール型開発は、図 1に示すように要求を開発初期段階に確定し、確定した要求に基づいて設計、実装、統合、テスティングを順次的に行う形の開発方法である。それに対してアジャイル開発は、開発途上で何回も動くソフトウェアを開発依頼者に提示し、フィードバックや要求の変化を受けながら開発する方法である。ウォーターフォール型開発は、日本のソフトウェア開発プロジェクトの半分以上で採用されており、未だ大勢を占めている。

図 1 ウォーターフォール型開発

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ウォーターフォール型開発には以下のような長所がある。

A) 開発依頼者側の計画、契約の負荷(リスク)が小さい
開発初期段階に確定した要求に基づいて計画や契約を締結すれば、要求の実現の責任をITベンダーに転嫁できる
B) 分業が可能
開発を複数フェーズに分けて、フェーズ間で文書による引き継ぎを行うことでフェーズ毎に異なる開発者(役割)による分業が可能になる

この「分業が可能」という長所を利用して、日本ではソフトウェア開発において複数の階層にも及ぶアウトソースという形態が一般化した。また、フェーズ間での引き継ぎのために作成される文書をレビューすることで品質を管理するというアプローチも広まった。
ウォーターフォール型開発の短所としては、以下のような点を挙げることができる。

イ) 要求確定後の仕様変更が困難
要求確定後に技術やビジネス状況の変化やビジネスニーズの理解が進んで要求を変更したいと望んでも、対応は次バージョン以降になる
ロ) 開発終盤に開発上の問題点が顕在化して遅れる
統合段階やテスト段階でアーキテクチャー上の問題やサブシステム間のインタフェースの不整合などの問題が顕在化して納期が守れない

欧米ではウォーターフォール型開発を適用するプロジェクト割合が半分以下に低下し、アジャイル開発を適用する割合が増えているということも報告されている。欧米でウォーターフォール型開発が減少している原因として以下のようなものが考えられる。

  • ビジネスや技術の変化にすばやく対応するための開発が求められている
  • ユーザー企業がある程度開発要員を抱えている

GoogleやSalesForceのようにクラウドでビジネスを展開する企業も、Appleのようにハードウェアデバイスやソフトウェアでビジネスを展開する企業も、Amazonのような販売でビジネスを展開する企業も競争に勝つために「ビジネスや技術の変化へのすばやい対応」を重視している。「ビジネスや技術の変化への対応」というのは以下のことを意味する。

  • ビジネス形態(モデル)や市場の変化に対応する
  • 新たな技術(IT機器)を組み込んだり、移行したりする必要がある

これらの「ビジネスや技術の変化」を先読みするのは不可能に近い。また、変化に対応した製品やサービスを早く市場に投入しないと高い利益を得ることができない。そのために、ウォーターフォール型開発からアジャイル開発への移行が進んでいると考えられる。
また、同時に自社で開発要員を抱えているために日本ほど「開発委託側の計画や契約の負荷(リスク)」に対処する必要はない。つまり、計画や契約という敷居が低いこともウォーターフォール型開発からアジャイル開発への移行が欧米で進んでいる理由になっていると考えられる。

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